代車としてやってきたのがSLK200というバブリーなクルマだった

クルマをディーラーに修理に出しました。「修理は二泊三日いただきたいので、その間この代車を使ってください」といって営業担当が乗ってきたは、SLK200という2シーターのオープンカーでした。あまりにバブリーな外観と、これ見よがしのズーズーしい“顔”に退きまくりです。そのとき真っ先に脳裏をよぎったのは「近所からどう見られるのだろう」という私は、矮小な小市民の小男でございます。
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ただ、こんな派手で金満チックなクルマはめったに乗れるものではありません。せっかくの機会なので、少しの時間だが、楽しんでやろうということで、ありがたくお借りしましたです。2005年から3年間シトロエンの「C3プルリエル」というオープンカーに乗っていたのですが、屋根が開くクルマは、5年ぶりです。ちょっとわくわくします。

このところの猛暑で、昼間は熱くて屋根なんぞ開けて走ったら焼け死んでしまいます。そこで、早朝5時30分過ぎから約1時間半、朝の涼しい時間帯を狙って、試乗しました。以下、その感想です。

運転席横手元、変速レバーの後ろについている開閉用レバーを上に持ち上げると、ハードトップが電動で持ち上がり、トランクにしまい込まれます。その開閉時の動きはどうぞ、動画でご覧ください。


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室内にいると、屋根が閉まるときがちょっと怖い感じでした、というのは、後ろから伸びてきたルーフトップがフロントガラスのピラーと合体するとき、グォトガキンってなけっこう大きな音がして激しくも、だがしかし確実に合体するので、「首や手を挟まれたら一発で死ぬなあ」という恐怖感に支配されてしまうわけです。まあ、メルセデスベンツのことですから、異物を感知したらそこで止まるような機構が設けられているのでしょうが、試しに手を出してみるという勇気はございません。

屋根を開けて走ると、驚くほど風を巻き込みます。60キロ程度で走ると髪の毛が怒張天を突く感じで、蛇頭女ゴーゴン状態の一歩手前という状況にボワボワと大騒ぎです。以前、乗っていたC3プルリエルでは、そんなに巻き込みはなかったので、ちょっと驚きました。これは後から知ったのですが、風の巻き込みを防止する透明アクリル製三角板がロールバーのところについており、それを引き出すと巻き込みがかなり抑えられるそうです。

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ただ、オープンカーだからといって、屋根を開けて走ったら、そちらに意識が奪われてしまい、そのクルマの百難を隠します。というわけで、試乗の半分は屋根を閉めて走りました。まず、エンジンの荒っぽさにちょっとびっくりです。1800ccの4気筒ターボエンジンなのですが、回転の上がり方が、バラヒョアゴゾボレてな感じで上昇します。ってわかりませんよね、まあ、イメージってことで…。

なんというか、がさつなエンジンというのが第1印象です。4気筒なんで、スムースではないことは覚悟してましたが、他の4気筒と比較しても、この非スムースさは、500万円も600万円もするクルマのそれとは思えませんです。

20年もシトロエンに乗ってきた私ですが、プジョー/シトロエン系の4気筒エンジンもお世辞にもスムースとは言えませんでしたが、ここまでがさつ感はなかったです。むしろ、以前試乗したシトロエンC6というV6エンジンより4発の方が軽快感が心地よく「シトロエンは4気筒がいいな」という印象すらもっていたほどでした。SLK200は、世界最高峰に君臨するメーカーのクルマなのですから、もう少しなんとかならんもんかというのが第1印象です。

ただ、ターボはとてもジェントルな感じのチューニングが施されており、たっ、たっ、たっ、ターボーッ!という印象はみじんもありませんでした。低回転から高回転までまんべんなくトルクが出ている感じでとても、扱いやすいエンジンという感じです。

スポーティーなクルマだけあり足回りは、ごつごつ感が、余りあるほどあります。ありまくりやがってました。とはいえ不快な感じはなく、これなら楽しく走れそうといった堅さです。ただ、このごつごつ感は、タイヤのせいでしょうか。ぶっとくて、恐ろしく扁平なタイヤをはいておるのですね。私は、タイヤには詳しくないのでわかりませんが、そういうことにしておきます。
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何にもまして驚いたのは、エレクトロニクス系の装備でした。レーダー系の装備が搭載されています。車線を逸脱しそうになると、ハンドルにコンコンコンと三回振動が伝わりドライバーに注意を喚起します。最初は、こんなハイテク機能がついていることを知らなかったので、日産スタジアムの前を新横浜方面に走っていたときにこの振動が来たときは、ビックリしました。後から、マニュアルを読んで知ったわけです。あと、車間距離を自動で保持してくれたりもするそうです。

それと、両側のドラミラーにオレンジの三角マークが付いており、最初は何だろうかって思っていたのですが、車線変更時など、死角に他車が存在することを知らせるアラートのようです。確かに、斜め後ろ横にクルマがいると、オレンジの三角マークが赤色に変わり、警告音が鳴ります。このような安全装置は大歓迎です。

屋根はガラスルーフになっているのですが、ボタン一発で曇りガラスになったり、透明なガラスになったりしました。電圧がかかると、ガラス内の色素粒子の配列が変わる仕組みのガラスを装備しているそうです。いや〜、ハイテクです。自宅リビングの掃き出し窓につけたいものです。
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話をエンジンに戻すと、最近のメルセデスは、小型中型クラスは、軒並みこの1800ccターボエンジンを搭載しているそうです。最近の欧州車は、みな排ガス規制や企業の環境ガバナンスをクリアするために、小排気量+ターボという組み合わせですよね。シトロエンもV6がなくなり、1600cc+ターボになりましたし、フォルクスワーゲンも1400cc+ターボが主流です。

たとえば、メルセデスのCクラスというセダンは、最も安価なC180から、上にむかってC200→C250とすべてこの1800ccの4気筒ターボを積んでいるそうです。で、C180とC250では価格が200万円近く異なります。同じエンジンでこの価格差はねーだろ!って思ってしまうのは、私が古い感覚も持ち主だからでしょうね。

もちろん、エンジンのチューニングを変えたり、ゴージャス系、ハイテク系装備の有無などエンジン以外の装備も異なるゆえの価格差なのでしょうが、上級グレード=「排気量大、気筒数多」というのがあたりまえだった時代が長く続いたわけですから、最近のこの傾向には、ちょっと感覚がついていけません。担当営業も『「V6のクルマを大切に乗る」っておっしゃるお客様もいらっしゃいます』って言っておったわけで、そういう感覚で昨今の小排気量時代に戸惑っている人も多いってことですよね。
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さて、平日の早朝に敢行した屋根開け試乗ですが、6時30分くらいになると、街には、お仕事に向かうクルマが増えてきます。そんな中、屋根を開けて走っているわけで、朝のプチ渋滞にはまったりしようものなら、「おうおう、こちとらこれから仕事にいくのに、おめーのそのチャラチャラした屋根開きクルマはなんでー」「リゾートじゃねえんだから、屋根なんて開けて走ってんじゃねーよ」みたいな視線をひしひしと感じる私は、矮小な小市民の小男だったということをいやというほど自覚させられたSLK200だったわけですね。

とはいうものの、またオープンカーがほしくなりました。まっ、お金ないから買えないけど…

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