iTunes Radioが不調らしい。以前『アップルの聴き放題サービス「iTunes Radio」は、音楽制作者を殺すのか』という記事を書いた僕としては、iTunes Radioに期待していただけに残念な気持ちだ。
ただ、自分で継続的に使ってみて不調の一因を理解できる。人気のSpotifyと比較すると音楽好きにとって、隔靴掻痒の感がありありなのだ。僕の場合、結局はSpotifyばかりを利用している。
SpotifyにあってiTunes Radioにない機能がある。それは、特定のアーティスト、特定のアルバムのみを再生する仕組だ。iTunes Radioは、その名が示すとおり、すべてにおいてラジオ型式なのだ。最初に選んだアーティストの楽曲に対する、様々なアーティストのリコメンド曲が順番に流れるという機能に徹してる。つまり、特定のアーティストやアルバムだけを聴きたいという需要には応えられないのだ。
僕の場合、ソーシャルメディアやネットの情報で知った聴いてみたいアーティストやアルバムをSpotifyで検索して聴く、という聴取パターンが多いだけに、iTunes Radioの完全リコメンド型ラジオ型式は、どうしても使用頻度が低くなるというわけ。
もちろん、リコメンド型ラジオ型式は、「未知の音楽との出会い」という部分においては有効な手段であることは確かだ。しかし、その仕組みはSpotifyにも存在するわけだし、音楽をディープに好きな人間ほど、自分で別途調べた楽曲を決め打ちで検索して聴きたいと思うのではないだろうか。また、リコメンドで「これはいい」というアーティストに出会ったら、そのアーティストのアルバムを通して聴きたいという欲求にもiTunes Radioは、応えることができない。
●iTunes Storeは時代遅れになりつつある
iTunes Radioの場合、iTunes Storeのダウンロード販売に直結しているので、特定のアーティストやアルバムだけを聴けるようにすると、たちまちダウンロードされなくなるというジレンマに陥るわけだ。だから、リコメンド型のラジオ型式でのサービスしか提供できないのだろう。
考えてみればこれはダウンロード型で大成功したiTunes Storeのその仕組みがエスタブリッシュメント化し、時代遅れになりつつあることを示している。世界の音楽リスナーの要求がサブスクリプション型式のストリーミングに移行し始めた今、ダウンロード＝所有というパッケージメディアの延長線上にあるiTunes Storeは、過去を捨てられないでもがき苦しむことになるのではないだろうか。
AppleがBeats Musicを買収するというニュースが流れた。Beats Musicは、月額9ドル99セントの完全なるサブスクリプション型式のストリーミングサービスだ。買収が本当に実施さるのか、仮に実施された場合AppleがBeats Musicをどのようなサービスとして取り込むのかはこのコラムを書いている現時点ではわからない。
だが、アーティストやアルバムを決め打ちで聴いたりダウンロードすることができるBeats Musicは、iTunes Storeの売上げをカニバリすることは確実だ。iTunes Storeの売上げを守りたいがために、Beatsの機能を制限するようなことをしたらリスナーの反発を買うだけだ。
そんなBeats MusicをiPhoneで試してみた。現状では、iOS、Android、WindowsPhoneだけで利用が可能だ。デスクトップマシンでは利用することができない。
【2014.6.11追記】勘違いをしていました。デスクトップマシンのブラウザからもログインすれば聴くことができました。失礼しました。
いや〜、インターフェイスがかっこいい。いわゆる、ゆーざーえくすぺりえんす、ってやつですか、それだけで満足度高し、なのだ。iTunes Radioの普通にアルバムカバーが並んでいるだけの芸のないUIが陳腐に見えてくる。そもそも、iOS7フラットデザインになってからのプレーヤーアプリのUIは僕的には大いに不満があるわけで、あのベストヒットUSAのオープニングを思わせる、気持ちのよいカバーフローを廃止した時点で僕的にはダメダメ感がありありだったわけです。
と、話が横道にそれたが、以下の動画は、Beats Musicアプリの初回利用時のお好み登録の様子です（4倍速再生です）。デザインはシンプルだけど、演出は凝っているといか、こういうのがユーザー満足度を上げると思うのですよ。ちなみに、Beats MusicもSpotify同様、VPNや串を経由してやれば日本からも登録することができます。日本のクレジットカードも受け付けてくれます。